| ~社会人としての基礎を固める講座~ |
田坂広志氏の教養講座が開催されました |
|---|
10月14日(水)、日経カンファレンスホールにて、多摩大学大学院教授でシンクタンク・ソフィアバンク代表の田坂広志氏の教養講座が行われました。テーマは「なぜ働くか、いかに働くか―仕事の報酬とは何か―」。仕事の報酬とは「働き甲斐ある仕事」「職業人としての能力」「人間としての成長」にあるという田坂氏は、自らの豊富なビジネス経験などを交えながら、働くことの素晴らしさ、時には厳しさを学生の皆さんに語りかけました。就職活動を始める学生の皆さんも約1時間半の「一期一会」を、心に焼き付けるように耳を傾けていました。誌面も限られているので、ここでは田坂氏の講演の要約をお伝えします。 |
「働き甲斐」という言葉がよく使われます。では働き甲斐とは何でしょうか?「お金」や「おもしろい仕事」をイメージされるかもしれませんが、働くという言葉には「はた(傍)」を「らく(楽)」にするという意味があります。つまり、誰かの役に立つということです。「はた」にも3段階あり、まずは一番身近な「職場」、そして「会社」、最後に「社会」へと広がります。では、新人がどのようにして「はた」を「らく」にできるのか? 一生懸命、仕事に取り組むことでしょうか。もちろん、その姿勢は大切ですが、それだけでは職場の同僚や先輩は楽にはなりません。仕事を的確にこなす腕がないと周りは「らく」にはならない。ビジネスパーソンとしてスキルを磨き、周りからの信頼を得ることが大切なのです。職場の仲間を「らく」にさせることが、「会社」や「社会」に貢献することにつながります。
では、自分の腕を磨く時に大切なのは何でしょうか? それは夢を描き、志を抱いて歩むことです。しかし、一人で夢を叶えることは難しい。夢を語り合える仲間も必要ですし、上司と目的を共有することも不可欠。周りと意思疎通を図りながら、自らの志を貫くなかで腕は磨かれる。腕を磨くことで「働き甲斐」が生まれるのです。ですから、どうか皆さんも地道に自らの腕を磨き続けてください。
腕を磨き続けることで、「職業人としての能力」が備わります。この職業人としての能力という言葉から何を思い浮かべるでしょうか? 専門的な知識だと考える人も多いでしょう。しかし、職業人の能力でもっとも重要なのは職業的な知恵です。専門的な知識と職業的な知恵はまったく異質なものです。まずは、この違いを理解していただきたい。何故なら、それが大きな分かれ目になるからです。例えば、弁護士という職業を考えてください。六法全書を覚えて司法試験に挑みますが、実際の弁護士の仕事は依頼者の話を聞きながら、解決の糸口を探し出します。その時に必要なのは法律の専門知識だけではありません。相手と意思疎通を図るコミュニケーション力、問題点を洗い出す分析力、相手に要点を伝える説明能力、そして交渉力など、あらゆる能力が問われます。これが職業的な知恵です。しかも専門的な知識は時代が変わると陳腐化しますが、職業的な知恵は時代遅れになることはありません。
こうした職業的な知恵は、人を通した体験から生まれます。「成功」や「プロ」をキーワードにした書籍が数多くありますが、そうした本を読んでも体験がない人に知恵は備わりません。私も師匠と呼べる何人かの上司から多くのことを学びましたが、大切なのは人から学ぶことです。そして学んだことを試行錯誤しながらも取り組み、反省・反芻することで経験を体験へと高める。この日々の地道な行為こそが職業的な知恵を身につける唯一の方法です。ですから、皆さんもぜひ「師匠」と呼べる人を見つけていただきたい。これから皆さんは多くの人と出会いますが、素直な気持ちを忘れなければ、巡り合う人すべてが師匠となる可能性もあるのです。「師匠」というと大げさに聞こえるかもしれませんが「口は悪いけれど、この人からは学ぶことがある」と感じれば、その人はりっぱな師匠です。そんな素晴らしい出会いをぜひ体験していただきたいと思います。
腕を磨き、職業的な能力を身につけていけば、自然に人間としても磨かれます。では人間を磨くとはどういうことなのでしょうか? それは「心を磨く」ということです。心得、心構えを身につけて、相手の心を感じる力を養うことが大切なのです。例えば、弁舌さわやかながら半ば強引に商品を売る営業担当者がいます。何とかお客様に対して売りつけてやろうと操作をするわけです。こうした人は技術があっても心得が備わっていない。だから、一時的に好成績を上げても長続きはしません。大切なのは、技術と心得を備えた職業人になることです。そこから人間としての成長が始まるのです。じつは仕事の究極の報酬は、「人間として成長できる」ことにある、と私は考えています。これがビジネスの素晴らしさなのです。
もちろん、腕を磨き、職業人の知恵を身につけて人間として成長していく道は決して平坦ではありません。高い頂を目指せば、時には頂が視界から消える森に入ることもあるでしょう。いくつかの挫折や失敗が待ち受けているかもしれません。それでも失敗から何かを学び取るという姿勢を貫いて、自らを磨き続けていただきたい。10年、20年をかけて自分を磨き続けた人は、相手の心はもちろん、自分の心の奥のエゴの動きもわかるようになり、運も強くなります。自らの人生を肯定する強さを備えることで、何が起こっても「ありがたい」という心境が生まれてきます。そんな心構えが強運を呼ぶことになります。今後、皆さんは多くの人に出会い、多くのことを学ぶはずです。その一つ一つの出会いに感謝して、人間として成長していくことを願っています。
![]() |
こういったセミナーを今まで何度か受けましたが、こんなにも一言一言が胸にしみるものは初めてでした。田坂先生のお話は大変興味深く、聞いている間にも何度か泣きそうになってしまうほど心に響きました。「自分の希望と違った人生を歩むことは素晴らしい。人生で与えられた全てに意味がある」とおっしゃっていたのが印象深かったです。 |
|---|
![]() |
「働くとは何か」というテーマを聴きに来て、「人生とはどんなものか」というものを教えていただきました。目の前の就職活動に焦っていた自分が小さく思え、もっと大きな視点から、自分の人生について考え直してみようと思いました。このような機会を与えていただけたことで、感謝でいっぱいです。 |
|---|
![]() |
働くうえで、何が大切であり、どういうことをすればいいかなどいろいろ考えさせられ、話を聞いてとてもプラスになったと思います。今回の講演を聞けたか聞けないかでは、精神的にとても差が出るのではないかと思いました。 |
|---|